【本の感想】ピーパー (1965) 余暇と祝祭
まれびとハウスに来てくれた人が「アメリカでヒラリー・クリントンよりバラク・オバマの人気があるのは leisure の姿が見えるから」という話を教えてくれた.オバマが余暇にバスケットボールをしたり家族と過ごしたりしているのはイメージがつくのに,クリントンからは仕事のイメージしか出てこない.そこが二人の違いだそうな.
『余暇と祝祭』の著者ヨゼフ・ピーパーがいうには,労働が絶対視された近代社会では「困難や苦労を経験しないと高みに至れない」と考えられている.一方で,古代や中世の西洋社会では余暇こそが高みであると捉えられていた.愛をもって自然に世界を「受け取る」状態こそが善であると.
もちろん,世界を受け取れるようになるため――「余暇をする」ため――に苦労がともないうることは著者も認める.けれど,「苦労したから良い」というわけじゃないだろう,むしろその人が尊厳をもった生き方をするほうが本質だ,という.
このご時世,著者のいうことはそりゃそうだ,と納得されるだろう.センター試験の倫理の問題として「遊びの意義」が出るくらいだ.だからなおさら,「余暇をする」ことを実践的な問題にしていく時期が来ている.