アマチュア通信

趣味と学校外学習を科学する

2018-01-01から1年間の記事一覧

感想:『ハーバードビジネスレビュー 12月号 特集:好奇心』

「興味」を研究する身として手に取らざるを得ない特集ですが,面白いです.社員が「好奇心」を発揮できると,新規事業に挑戦したり,多様な経験をしたりしてリーダーとしての能力を育くんでいく.その一方で,上司からしてみれば,好奇心のおもむくまま部下…

GitHub買収に海外新聞はどんな見出しをつけたか

MicrosoftによるGitHub買収に関して日本経済新聞が「設計図共有サイト」という表現を使ったことに噛みつく人がたくさん出た.その後は「開発者向け共有サイト」という表現も使われている. www.itmedia.co.jp 海外の新聞ではどんな見出しがつけられたのだろ…

文化活動の行く末は何か?

昨日,イギリスの文化政策を研究している後輩と食事をして,彼がやっている文化政策研究と僕がやっている学校外学習研究の視点の違いを整理してもらった.要約すると以下のようになる. 文化政策研究 学校外学習研究 目標 文化活動の行く末の提示 文化活動の…

Edu-Lab Meeting で発表をしました

2月27日に開催されたEdu-Lab Meeting「趣味」と学びを考える,で発表する機会をいただきました.博士論文に向けた「趣味を深める共同体とネットワーク:オーケストラと写真の比較調査から」というお話をさせてもらい,多くのご意見をいただきました.ありが…

大学教員は「レッスンプロ」だと思う

1)大学教員は余暇に研究をする 「あなたにとって研究とは何ですか?」と尋ねられたら、「趣味です」と答える。好きでやっていることだけど、それで経済効果が生まれるような研究テーマではないし、それで良いと思っている。 将来のキャリアの選択肢にはも…

領域固有の認知を知るための文献リスト

認知心理学,特に熟達研究では,認知の領域固有性(domain specificity)は鍵概念である.チェスの熟達者は,チェスに関して体制化された知識を特定の条件――例えば駒の配置――に応じて活用することができる.だが,その知識はあくまでチェスという領域におい…

#遊びの哲学 に参加して――遊びのなかの自由と自律

木村洋平さんが主宰する哲学カフェが「遊び」をテーマにしていたので参加した. idea-writer.blogspot.jp 木村さんによる「遊び」概念の博物誌をうかがって面白かったのが,遊びには 自由――日常のルールからの脱出 自律――別世界のルールの構築 の両面がある…

【論文紹介】余暇 vs 勉強:教室でのゲームデザインの課題

Øygardslia, K. (2018) 'But this isn't school': exploring tensions in the intersection between school and leisure activities in classroom game design. Learning, Media, and Technology, DOI: https://doi.org/10.1080/17439884.2017.1421553 1)…

学習=「慣習的な人工物を再生産できるようになること」

1)学習とはどのような個人の変化を指すのか ksugiyama.hatenablog.com 前回の記事で「学習」とは「任意の2時点における特定の個人の変化を定式化したものである」という条件を述べたが,これは必要条件であって,「学習」を定義するには不十分だった.「…

過去を振り返ることでしか学習は認識できない

1)過去を振り返ることでしか学習は認識できない 日常生活や科学実践において「学習」という現象は次のような特徴をもっている. 任意の2時点における特定の個人の変化を定式化したもの ※これは必要条件であって必要十分条件ではない.例えば「5分前と比べ…

【本の感想】ピーパー (1965) 余暇と祝祭

まれびとハウスに来てくれた人が「アメリカでヒラリー・クリントンよりバラク・オバマの人気があるのは leisure の姿が見えるから」という話を教えてくれた.オバマが余暇にバスケットボールをしたり家族と過ごしたりしているのはイメージがつくのに,クリン…

【本の感想】田中 (2017) 関係人口をつくる

「関係人口」という言葉をはじめて聞いたとき,なるほど!と膝を打った.移住してくる「定住人口」でもないし,つかの間に観光していく「交流人口」でもない.二拠点暮らしだろうと,地元の特産品を食べるだろうと,地域と何らかの形で定期的に関わる人びと…

2017年の振り返り

2018年になりましたが,昨年の振り返りです. 2017年に直面したこと a)データは偉大 自分で収集・分析したデータを持っていると,色んな場所で自分の関心について話せてすごい.年初に提出した修論をもとに,日本教育工学会研究会・全国大会や日本文化政策…