アマチュア通信

趣味と学校外学習を科学する

池田 (2016) 空気のつくり方

 友人が贈ってくれた3冊からの1冊目.TBSからの買収後,横浜DeNAベイスターズの初代球団社長を務めた著者が,いかにして球団経営を進めていったのかを書いた本.赤字だった経営を黒字にし,最下位でも横浜スタジアムが満員になり,チーム自身も今年は2位~3位を争っているのだから大転換を成し遂げたことになる.誘われてハマスタ観戦にも行ったら,球場内外で横浜と野球の魅力を伝える環境づくりがされていて,阪神ファンでも普通に楽しかった.
 野球場でビールを飲むうまさとか,子どもたちの日常生活におけるベースボールキャップとか,文化としての野球がもつ楽しさに注目して,その魅力を形にしていくというやり方はとても好感をもった.アメフトやディズニーランドといった他業界の楽しませ方を参考にしつつも,「野球」という活動がもつ(潜在的な)楽しさを実現していくやり方は,ただ集客すればいいというものではなく,野球という楽しい文化自体を育てるのだろうなと思う.
 この本を読んでいて,人に請われて合コンのセッティングをよくやっていた友人の言葉を思い出した.彼女が言うには,チャリティイベントみたいに大義名分があるものよりも,合コンみたいに「来てくれた人が純粋に楽しんでくれたかどうか」で成功/失敗が分かれるもののほうがよっぽど難しい.
 楽しさという謎は、人類の叡智を結集させて挑む価値のある難題なのだろう.そこにビジネスとして挑むのも,研究として挑むのも両方面白い.

空気のつくり方

空気のつくり方