ポルテッリ (1991) オーラルヒストリーとは何か
最近、自分がグッとくるのは「全く新しいことを知ること」ではなく、「すでに知っていることを新しく見るための視点を得ること」だと思う。社会科学に惹かれ、オーラルヒストリーやライフヒストリーに魅力を覚える理由もここにある。
歴史学では伝統的に文書資料が用いられてきたが、本書は口述資料の価値を述べる。そうした資料が私たちに教えてくれるのは、「どんな出来事が起きたのか」に加えて「その出来事は人々にとってどんな意味をもっていたか」ということだ。例えば、1930年代にアメリカ・ケンタッキー州で起きた炭鉱労働者のストライキは、労働者側も資本家側もともに星条旗🇺🇸というシンボルを掲げていた。しかし、オーラルヒストリーの聞き取りが明らかにするのは、両者にとってアメリカの象徴たる星条旗が意味するところは異なっていたということだ。ここには、同じ対象を別々に意味づける——労働者と資本家という——2つの視点がある。
人々の語りを聞くということは、その人たちがどのように世界を経験しているのか、その見方に触れることだ。それがとても面白い。
- 作者: アレッサンドロポルテッリ,Alessandro Portelli,朴沙羅
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2016/03/01
- メディア: 単行本
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