アマチュア通信

趣味と学校外学習を科学する

週刊東洋経済 2017年7月22日号

 リンダ・グラットンの『LIFE SHIT』は、長寿命化が進み人生100年になる21世紀の社会では、教育→仕事→引退という従来の生き方モデルからの転換が必要ですよと説いた本。この東洋経済の特集は、『LIFE SHIT』的な生き方を現代日本でするにはどうしたら良いかということが、転職や副業の経験談などと一緒に紹介してある。

 その中で印象に残ったのは、退職して家族で世界旅行をしている人が「デンマーク福祉国家で手厚い保護があるからこそ、生きる目的に悩む人が多い」と語っていたこと(特集の本筋とは関係ないけど)。自分が生きる意味や人生を貫く価値観を人はどうやって見いだすのだろう。『LIFE SHIT』ではエクスプローラー(探検者)として旅とかをしながら探そうと書いてあるけれど、そう上手くいくものなのかな。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 

ダナーマークほか (2002) 社会を説明する――批判的実在論による社会科学入門

 社会科学の研究とは何をすることなのかを哲学的・方法論的に書いた本。社会科学の特徴は自然科学と違って、みんながすでに知っていたり経験したりすることがらを扱う点にある。宇宙を見たことのない人は多くても、教育を受けたことのない人や労働をしたことのない人は少ない。だが、そういうすでにみんなに馴染みのある対象を学術的な「概念」というレンズを通してみると、新たな理解の仕方を得たりやそれを支えるメカニズムを発見できたりする。それが社会科学の仕事なので、だから概念や理論が決定的に重要になる。

社会的世界における生成的な力とメカニズムについての知識を得ようと願ったとき、私たちが扱いうる最もすばらしい道具のひとつは、出来語の操作による特定の側面の隔離ではなく、むしろ思考における特定側面の隔離、すなわち抽象化なのである。69

 研究をやらない人は別に本書を読まなくてもいい。でも研究をやる人は研究をやらない人にこの内容を伝えられるべきなんだろうなと思う。「研究って何やってんの?」という素朴な問いに答えることになるから。そして、自分のやっていることを人に話せたほうがたぶん楽しいので。

社会を説明する―批判的実在論による社会科学論

社会を説明する―批判的実在論による社会科学論

  • 作者: バースダナーマーク,リセロッテセコブセン,ジャン・Ch.カールソン,マッツエクストローム,Berth Danermark,Jan Ch. Karlsson,Liselotte Jakobsen,Mats Ekstr¨om,佐藤春吉
  • 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
  • 発売日: 2015/03/31
  • メディア: 単行本
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