アマチュア通信

人々の趣味や遊びとそれを捉える視点

【論文紹介】余暇 vs 勉強:教室でのゲームデザインの課題

Øygardslia, K. (2018) 'But this isn't school': exploring tensions in the intersection between school and leisure activities in classroom game design. Learning, Media, and Technology, DOI: https://doi.org/10.1080/17439884.2017.1421553

1)教室に持ちこまれるゲームデザイン

ゲームの利点

ゲームの教育的効果は一般的に認められるようになってきた.特に最近では,シーモア・パパートの構築主義や,それを引き継いだヤスミン・カファイらのプログラミング教育によって,ゲームプレイだけでなくゲームデザインによっても,21世紀型スキルなどの学習が導かれると考えられている.教室にゲームデザイン活動が持ちこまれることもめずらしくない.

ゲームの課題

その一方で,ゲームは旧来の勉強のイメージと抵触し,教室にゲームが持ちこまれても生徒が上手く活動の目的を理解できないことがある.そこでこの論文は,

教室でのゲームデザインに参加する学生間に生じる緊張関係の特徴は何か?

を相互作用分析によって明らかにした.

2)ゲームデザイナーフレーム vs 学生フレーム

ノルウェーでは教育でのICT利用が盛んであり,ゲームも積極的に取り入れられている.ノルウェー東部のある学校では,6年生と7年生(11歳と12歳)の生徒が3人一組のグループをつくり,4つの歴史トピック(ルネッサンス大航海時代,中世,バイキング時代)についてRPGをデザインしていた.著者はその様子をビデオ撮影し,相互作用のフレームとスタンステイキングに着目して分析した.

その結果として,教室に持ちこまれたゲームデザインにおいて,ゲームデザイナーフレームと学生フレームの緊張関係が生じることが分かった.

ゲームデザイナーフレーム 学生フレーム
ゲームのストーリー,キャラクター,世界観を強調.しばしば勉強の内容は無視する 勉強内容の知識,教科書やウィキペディアなどを根拠に用いる

例えば,ルネッサンス時代の町並みを作成していたグループ.ゲームデザインに熱心なサンダーは,キッチンや寝室が作り込まれた家をつくっていた.それに対し,ロビンは当時の家はそんなに大きくないと意見する.サンダーは家がこうなっている方が楽しいというが,ロビンは馬鹿げているという態度を見せる.

ゲームデザイン活動に,ゲームデザイナーフレームで臨む学生と,学生フレームで臨む学生がいるとき,相互作用のなかで緊張関係が生じるのである.こうした緊張関係を,著者は余暇と勉強をめぐる対立としている.

3)解決策:グラウンドルールの設定

考察において著者は,

アカデミックな学習内容に忠実なことが前提で,それに加えてゲーミングに関する知識をリソースとして活用しよう

というグラウンドルールを事前に設定すれば,緊張関係は生じにくいのではないかと提案している.

このケースでは解決策も考えやすいが,おそらく余暇 vs 勉強の緊張関係は,「ゲームデザイナーフレーム vs 学生フレーム」以外の形でも生じるだろう.伝統的な教室活動と余暇活動が出会ったときに,どんな課題が生じるのか.その課題を解決するにはどうしたらいいのか.といった思考を誘発してくれる論文である.

 

参考

・2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜『Scratch』 http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/026.html