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[学術英語]theoretical puzzle

さいきん2回ほど見かけた学術英語の表現で,theoretical puzzleというものがある.puzzleには「難問」という意味があるので,「理論的難問」を意味する.用例を見ている感じ,「ある現象に関して,理論的には相反する2つのメカニズムが働いていると考えられる.では,両メカニズムが働いた結果,現実はどのようになっているのか」ということを理論的難問と呼んでいる.

例えば,American Sociological Assosicationが2013年に博論賞を出したLarissa Buchholzの研究("The Global Rules of Art")の紹介では,こんなtheoretical puzzleが使われている.

本研究は,ひとつのtheoretical puzzleから始まっている:グローバリゼーションは,文化的生産物の国境を越えた流れと評価を不可避にともなう.このとき,このダイナミクスは,一部の西洋諸国からの文化的生産物が支配を拡大することを導いて文化的同質性に帰着するのだろうか.それとも,非西洋諸国の生産物がより流通し,認知を増すことを可能にして文化的多様性の増加をもたらすのだろうか?

The study begins with a theoretical puzzle: as globalization entails extraordinary cross-border flows and growing transnational valuation of cultural goods, will these dynamics lead to the extended dominance of cultural goods from a few Western countries, resulting in cultural homogeneity, or enable greater circulation and recognition of cultural creations from non-Western regions, and thereby produce increased cultural diversity?

あるいは,American Sociological Reviewに載ったMargaret Fryeの研究("Cultural Meanings and the Aggregation of Actions: The Case of Sex and Schooling in Malawi")のアブストラクトがある.

文化的意味は,どのようにして行為の集合的パターンから逸れると同時に原因になるのだろうか?一方では,共有された認知的連合は人びとの日常行為を導き,それらの行為が集まってふるまいの傾向――社会学者が測定し理解したいもの――を生み出す.他方で,共有された理解は,しばしばふるまいの傾向に矛盾する.このtheoretical puzzleに,マラウイにおける性関係と学校からのドロップアウトに関する経験的ケースを検討することで取り組む.

How can cultural understandings simultaneously diverge from and contribute to aggregate patterns of action? On one hand, shared cognitive associations guide people’s everyday actions, and these actions comprise the behavioral trends that sociologists seek to measure and understand. On the other hand, these shared understandings often contradict behavioral trends. I address this theoretical puzzle by considering the empirical case of sexual relationships and school dropout in Malawi.

相反する2つのメカニズムが働いていると理論的に考えられるとき,「では,経験的データを見ることで,結果として両者がどのように関係しあっているのかを見よう」というのがtheoretical puzzleを解くということだ.『社会を説明する――批判的実在論による社会科学論』における

あるいくつかのメカニズムはお互いを強化しあい,他のメカニズムはお互いの発現を妨害しあっている(p. 88)

どんなときも,相異なった様々なメカニズムの活動の現実の効果については,ある不確定さが存在してる(p. 89)

という考え方に通ずる.

 『イシューからはじめよ』では,イシューの定義を

A)a matter that is in dispute between two or more parties

  2つ以上の集団の間で決着のついていない問題

B)a vital or unsettled matter

  根本に関わる,もしくは白黒がはっきりしていない問題

という両条件を満たす問題としている.theoretical puzzleは,イシューとしての条件をけっこう満たしているように思える.これが見つかると面白い研究になりそうである.

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

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