アマチュア通信

趣味と学校外学習を科学する

読了

感想:『ハーバードビジネスレビュー 12月号 特集:好奇心』

「興味」を研究する身として手に取らざるを得ない特集ですが,面白いです.社員が「好奇心」を発揮できると,新規事業に挑戦したり,多様な経験をしたりしてリーダーとしての能力を育くんでいく.その一方で,上司からしてみれば,好奇心のおもむくまま部下…

【本の感想】ピーパー (1965) 余暇と祝祭

まれびとハウスに来てくれた人が「アメリカでヒラリー・クリントンよりバラク・オバマの人気があるのは leisure の姿が見えるから」という話を教えてくれた.オバマが余暇にバスケットボールをしたり家族と過ごしたりしているのはイメージがつくのに,クリン…

【本の感想】田中 (2017) 関係人口をつくる

「関係人口」という言葉をはじめて聞いたとき,なるほど!と膝を打った.移住してくる「定住人口」でもないし,つかの間に観光していく「交流人口」でもない.二拠点暮らしだろうと,地元の特産品を食べるだろうと,地域と何らかの形で定期的に関わる人びと…

落合 (2017) 超AI時代の生存戦略

落合さんのような一流の研究者が、一般書のレベルでいろいろ思考を開陳してくれる状況は素直に楽しい。まれびとハウスに出入りしていただとか情報学環の先輩だとかで勝手に親近感をいだいているせいもある。 57ページに「ものごとには透明性と趣味性があって…

レッシグ (2004) Fee Culture

インターネット時代において,著作権という制度は制作物を保護する機能に偏重していて,過去の制作物を活用した創造を疎外してしまっていると論じた本.著者はサイバー法の研究者にして活動家のレッシグ.創造性というのは蓄積されてきた文化を素材にして発…

ばるぼら, さやわか (2017) 僕たちのインターネット史

僕たちのインターネット史 作者: ばるぼら,さやわか 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2017/06/17 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を見る 日本でインターネットがどのようなものとして語られてきたのかを、前史として80年代…

村上春樹 (1998) 使いみちのない風景

学会帰りの道すがら、松江にartos(http://www1.megaegg.ne.jp/~artos/about.html)という本屋がありそこで手にとった本。良いセレクトショップだなという店内の雰囲気と旅情があいまって自然とこの本になった。僕たちの記憶の中に断片的に残されている旅の…

エンゲストローム(1987)拡張による学習――活動理論からのアプローチ

読むまでは本の性格がよく分かっていなかったが,読んでみてあくまで介入のためのマニフェストなんだなと納得した.活動システムの図が有名な割に,学説史的にどういう意義があるのかほぼ分からない本である.ただ翻訳においては原著から――「全体を読み通す…

松浦 (2008 [2003]) くちぶえサンドイッチ

たまにカリフォルニアかぶれになりたい気持ちになる,この感情,みなさんにも伝わると思うのですがどうでしょうか.ゆっくりと流れる時間,街中の散歩,コーヒーと読書,風と陽光に包まれて.そういうのに浸りたい気分. 読書でそれを満たしたいけど,センス…

池田 (2016) 空気のつくり方

友人が贈ってくれた3冊からの1冊目.TBSからの買収後,横浜DeNAベイスターズの初代球団社長を務めた著者が,いかにして球団経営を進めていったのかを書いた本.赤字だった経営を黒字にし,最下位でも横浜スタジアムが満員になり,チーム自身も今年は2位~3位…

プラウト (2005) これからの子ども社会学

読書会があると聞いて読んだ本。私たちは「子どもは〜〜というものである」(例えば、「子どもは学校で教育されるべきである」)という信念を、本当はそれは1つの考え方に過ぎないのに、さも自明であるかのように抱いてしまう。子ども/大人という区別を当…

ポルテッリ (1991) オーラルヒストリーとは何か

最近、自分がグッとくるのは「全く新しいことを知ること」ではなく、「すでに知っていることを新しく見るための視点を得ること」だと思う。社会科学に惹かれ、オーラルヒストリーやライフヒストリーに魅力を覚える理由もここにある。 歴史学では伝統的に文書…

週刊東洋経済 2017年7月22日号

リンダ・グラットンの『LIFE SHIT』は、長寿命化が進み人生100年になる21世紀の社会では、教育→仕事→引退という従来の生き方モデルからの転換が必要ですよと説いた本。この東洋経済の特集は、『LIFE SHIT』的な生き方を現代日本でするにはどうしたら良いかと…

ダナーマークほか (2002) 社会を説明する――批判的実在論による社会科学入門

社会科学の研究とは何をすることなのかを哲学的・方法論的に書いた本。社会科学の特徴は自然科学と違って、みんながすでに知っていたり経験したりすることがらを扱う点にある。宇宙を見たことのない人は多くても、教育を受けたことのない人や労働をしたこと…