How to Become an Amateur

大人の趣味とそれを支える環境について

日本教育工学会全国大会で研究発表をしてきます

日本教育工学会(JSET)の全国大会が9月16日~18日に島根大学で開かれます.大会では以下のポスター発表をしてきます.

P1p-35 杉山昂平・森玲奈・山内祐平「趣味を実践する学習環境における個人的興味と共同体の関係性――アマチュア・オーケストラを事例にして」(一般研究3 ポスター(P1p) 9月16日(土) 14:00〜15:20 会場:大学会館)

https://www.gakkai-web.net/gakkai/jset/taikai33/program/program.html#P1p

修論のデータを博論に向けて「趣味における個人的興味と共同体の関係」という理論的文脈に位置づけ,再解釈する内容です.

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Out-of-School Learning 研究は間違いなく面白いので,日本でも研究が盛んになるよう頑張っていきたいです.大会では研究発表だけでなく論文投稿セミナーも開かれるので,しっかり勉強してこようと思います.お目にかかったらみなさまよろしくお願いします.

クラシックな研究をしたい

 研究室夏合宿への参加、今年は助教の方々に研究デザインを聞くセッションがあって大変勉強になった。斬新なアイデアで教育システムを開発して新しい学びの世界をつくろうとする人がいれば、フィールドに飛び込んで現場の面白さを伝えようとする人がいて、めざす研究像は多様である。

 話を聞いていて、自分の目標として「クラシックな研究をする」という言葉が浮かんできた。それはつまり、学説史的に古典的で王道の概念や問題を、全く新しい対象において考えなおすことで学説史の発展をめざす、というスタイル。もともと松岡正剛の千夜千冊が好きだったこともあって、文献どうしが関連づけられた大きな流れを見いだすことが好きだ。研究をするときに「先行研究に自分の研究を位置づけなきゃいけない」みたいな気負いはなくて、むしろ先行研究に位置づけることが一番おもろいやん、と感じる。

 以前はこういう嗜好はあんまり他の人には伝わらないかなと思っていたれど、合宿から帰ってきて家の人と話していて思うには、彼女には普段の会話のなかで伝わっていたようだ。案外、分かってくれる人はいるのかもしれない。

エンゲストローム(1987)拡張による学習――活動理論からのアプローチ

読むまでは本の性格がよく分かっていなかったが,読んでみてあくまで介入のためのマニフェストなんだなと納得した.活動システムの図が有名な割に,学説史的にどういう意義があるのかほぼ分からない本である.ただ翻訳においては原著から――「全体を読み通すのに容易であるようにと考えて」――割愛された部分があるので,そこに記述があるのかもしれない.あるいは,レオンチェフを読んだほうがいいのかもしれない.

「拡張的な発達研究」においても「活動システムの分析」のステップは存在しているが,その分析をどれだけ豊かにできるのかという方向性での研究は進んでいるのだろうか.本書では「対象と道具に注目しよう」程度のことしか言っていない.一方で,「活動システムの分析」自体は,エスノメソドロジーSTSといった分野がそれを究極的な目的にして研究しているぐらいなのだから,そう簡単に分析をやり遂げられるようなものでもないと思う.

「文化歴史的活動理論(Cultural Historical Activity Theory: CHAT)の文脈に位置づけられた研究において活動システムの分析がいかにやり遂げられているのか」という問いは先行研究を読むときに意識しておきたい.介入先行で分析が手薄な研究というのは学術的新規性が全くわからないものになりがちだから.

 

拡張による学習―活動理論からのアプローチ

拡張による学習―活動理論からのアプローチ

 

 

日本社会と「楽しさ」

なぜ自分が大人の趣味を研究しているのか,問題意識に近いと思った記事とツイート.ぼくたちは楽しさを培っていく日本社会を,まだ知らないのだ.
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これはスポーツ観戦でも美術館でも動物園でも博物館でも一緒。大人になったら、楽しさのほとんどは「リテラシー」で決まる。同じソフトを入力しても、そこからどれだけ多くの「物語」を読み取れるかで、その体験の価値は大きく変わる。その能力は「センス・オブ・ワンダー」と呼ばれる。

 
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海外では、学校でスポーツをやらず、地域のクラブに所属してプレーが継続できる(習慣がある)ため「期間限定」なんて発想は全く存在しない。ましてや中学、高校生、大学生が“引退”という言葉を平気で使うのは日本人にしかない感覚であろう

victorysportsnews.com

概念のヴィジュアライゼーション

 そのうちグラフィックデザインの学校に通いたいと思っている.研究の内容を可視化する技術を身につけたいからだ.特に,概念や理論をいかにしてビジュアライゼーションするのか,という点に問題意識がある.

 数量的なデータを扱うことはあまりないので,グラフを使ったデータビジュアライゼーションにそこまで入れ込む必要は今のところない.一方で,言語的なデータや,データと先行研究をもとに作成した,概念体系は分析や論文でも頻繁に使う.こうした質的な内容を要約し,可視化する技術を身につけたい.何度も公に使うようなグラフィックはプロのデザイナーに頼んでもいいと思っているけれど,デザインについて基礎的な理解がないとうまくプロに発注することもできないだろう.何より日常的にグラフィックを生産できると,ゼミや日々の議論の材料となっていいはずだ.

 Ernst Haasという写真家の作品"The Creation"は,創世記の物語を写真で表現したものらしい.そういう図像表現による概念のrepresentationをある程度使いこなせるようになりたい.

The Creation

The Creation

 
ザ・クリエイション 天地創造―エルンスト・ハース写真集

ザ・クリエイション 天地創造―エルンスト・ハース写真集

 

 

リーディング再訪

 もう英語で書かれたものしか面白そうなものがない――今さらだけどハッとした.学習研究しかり趣味研究しかり,論文で先行研究として直接的に言及するかどうかはともかく,研究者なら読んでいて当たり前の「現代の古典」的な本や論文で思い当たるものは,もう翻訳の出ていない英語文献しかないことに気づいた.これまでも先行研究は英語文献しかないので必要に駆られて読んではいたけれど,楽しみのために読みたい学術書も英語で読むしかないみたいだ.英語どころか,いくつかフランス語もある.

 英語でのオーラルコミュニケーションがてんでだめな自分だが,少なくともリーディングに関しては,必要に駆られて読んでいるうちに多少は向上した気はしている.ただそれは背景知識が増えたからかもしれず,英字新聞でなじみのない政治の話題とかを読むと相変わらず苦労する.専門分野のものだって,日本語と比べれば読むスピードは圧倒的に遅い.補足的に英語を読んでいるのならこれでもいいのかもしれないけれど,もう英語でしか読むものがないなら,この調子だと困る.ほかに(日本語で/短くて)良さそうなのがなかったら読むか,ではなく,積極的に読まなくてはならない.

 ただ英語論文を読んできただけで,人文学的な精密な講読をしたこともなく,リーディングについて集中的に訓練したことは全くないのだけど,やった方が良いのではないかという気がしてきた.大量に読んでも疲れない基礎体力がほしい.どうしたら良いのだろうか.単語を覚える?

 Academic reading skills に関するオンラインのリソースを集めはじめる.

 

追記 2017.08.14

 丸善の洋書コーナーを見ていたら,「自分にとって見たことはあるけど意味は即答できない単語」が絶妙なレベル感でセレクトしてあるボキャブラリー本に出会ったので買ってきた.1日1ページ,6単語を覚える.それに加えて自分が集めてきた論文PDFから単語の使用例を検索すると面白い.例えば,eminent[傑出した]という語は,認知心理学の熟達研究に用例がある.さもありなんという感じ.Voracious[貪欲な]なら,文化的雑食性の研究が出てくる.

1100 Words You Need to Know

1100 Words You Need to Know

 

 

松浦 (2008 [2003]) くちぶえサンドイッチ

 たまにカリフォルニアかぶれになりたい気持ちになる,この感情,みなさんにも伝わると思うのですがどうでしょうか.ゆっくりと流れる時間,街中の散歩,コーヒーと読書,風と陽光に包まれて.そういうのに浸りたい気分.
 読書でそれを満たしたいけど,センスの良い本じゃないとキザすぎて露悪的になるので選書が難しい.なので信頼できる読書人に聞くのが良いだろうと思って,見繕ってもらったのが本書.
 一読して文体のうまさ軽やかさに敬服しました.村上春樹が「戦争とか革命とか飢えとか,そういう重い問題を扱わない(扱えない)となると,必然的により軽いマテリアルを使うことになりますし,そのためには軽量ではあっても俊敏で機動力のあるヴィークルがどうしても必要になります」と書いていたけど,それを満たすようなことばの乗り物=文体.「生活」や「日常」を書くのに,悲劇や喜劇の文体は大げさすぎるわけで.

「とりたてて何も用事はなにのに,早起きしてしまったからには,部屋でじっとしていられるはずはなく,散歩がてらテクテク出かけたファーマーズマーケット.新鮮な野菜やフルーツはもちろん,ちょっとした総菜などをチョコチョコ食いできるので,サンフランシスコでの朝の散歩の寄り道にはもってこいでありました.」

  こういう生活の一コマをちゃんと切り出して書ける著者はすごい(解説で角田光代が,それは「作者が自分の『好き』を知り抜いているからだと思う」と書いている).で,またこういう本を読んできた友人は羨ましいなと思った.

くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集 (集英社文庫)

くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集 (集英社文庫)